誰がどれだけ損しているか、誰もわからない
1980年代後半から1990年代初頭にかけて、米国では多数の貯蓄貸付組合(S&L)が破綻して金融危機を招いてしまいました。
これを教訓にして、金融機関が巨額の不良債権を抱えないように、住宅ローンの証券化が進みました。
米国の住宅ローン貸付残高は約10兆ドル(約1200兆円)で、このうち約6兆ドル(700兆円)が小口に分けられた「住宅ローン担保債権」として取引され、このうち低所得者向けローンであるサブプライムローン債権を組み入れた証券は、約8000億ドル(約95兆円)あるとみられています。
ちなみに、「住宅ローン担保証券」とは、金融機関などが、住宅ローンの借り手から元利金の返済を受ける権利(債権)を投資家に転売するために作られた証券で、貸付を行った金融機関が返済期日よりも前に債権の大半を現金で回収できるというメリットがあります。
このように小口証券化された債権は、一部は内容が複雑な金融商品に姿を変えつつ、世界中で取引されています。
サブプライムローンの焦げ付き急増を引き金にした世界的な株安の流れは、この債権の小口証券化が、かえって多大な影響を世界に与えてしまったという、皮肉な結果を生んでしまいました。
さらに、一部が複雑な金融商品に姿を変えている小口の証券化によって、一体誰がどれだけ損失を被っているか、各国の金融当局はその実態をつかむことができないんだそうです。
このことが、世界中の投資家を不安にさせてしまっているという、まさに負の連鎖となっています。
せっかく金融機関が巨額の不良債権を抱えないようにと考案された方法が、金融機関を不安や混乱に陥れているのです。
なんという矛盾と言うか、やりきれなさを覚えます。
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